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亡き王女のためのパヴァーヌ 店主のひとくちエッセイ004
- enoteca non troppo
- 3月28日
- 読了時間: 1分
休日に、カウンターで飲むことがあります。
その日は、前日にお客様から評判の良かったローヌの白、シャトー・サンコムのレ・ドゥ・アルビオン。
信頼のおける作り手、柔らかな果実味がたっぷりで華やか。
先日手に入れた一枚のレコードに針を落とします。
1964年、東京オリンピックの年、
上野の東京文化会館のライブ録音、
オール・ラヴェル・プログラム。
パリ音楽院管弦楽団、クリュイタンスのただ一度の来日公演。
燕尾服の指揮姿はフランスのエスプリです。
とりあえず、ワインを一口、・・・これは素晴らしい。
乳白色と薄黄色の世界。
拍手の後、二曲目が始まる、今度は雰囲気が一変します。
雅で、平安の響き、上野の森の精が、クリュイタンスに
憑いたようです。
フランスのエスプリではありません。
いにしえの平安の物語、溝口健二の世界。
山椒大夫の森の沼、安寿のためのパヴァーヌ。
ラヴェルの響きに、お香が焚かれてるようです。
「安寿恋しや、ほうやれほ。
厨子王恋しや、ほうやれほ。」
グラスの中は、薔薇や、白胡椒、木蓮、アカシアの香りがただよい、
音楽の余韻に寄り添っています。
さて、もう一度、レコードに針を落とし、
ワインをそそぎ、再び味わうことにしましょう。
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