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亡き王女のためのパヴァーヌ 店主のひとくちエッセイ004




休日に、カウンターで飲むことがあります。


その日は、前日にお客様から評判の良かったローヌの白、シャトー・サンコムのレ・ドゥ・アルビオン。


信頼のおける作り手、柔らかな果実味がたっぷりで華やか。


先日手に入れた一枚のレコードに針を落とします。


1964年、東京オリンピックの年、

上野の東京文化会館のライブ録音、

オール・ラヴェル・プログラム。

パリ音楽院管弦楽団、クリュイタンスのただ一度の来日公演。

燕尾服の指揮姿はフランスのエスプリです。



とりあえず、ワインを一口、・・・これは素晴らしい。

乳白色と薄黄色の世界。


拍手の後、二曲目が始まる、今度は雰囲気が一変します。


雅で、平安の響き、上野の森の精が、クリュイタンスに

憑いたようです。

フランスのエスプリではありません。


いにしえの平安の物語、溝口健二の世界。

山椒大夫の森の沼、安寿のためのパヴァーヌ。


ラヴェルの響きに、お香が焚かれてるようです。


    「安寿恋しや、ほうやれほ。

     厨子王恋しや、ほうやれほ。」




グラスの中は、薔薇や、白胡椒、木蓮、アカシアの香りがただよい、

音楽の余韻に寄り添っています。



さて、もう一度、レコードに針を落とし、

ワインをそそぎ、再び味わうことにしましょう。


    


    



    


    

    


    


    

    


    


    


    


    


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